2016年7月11日月曜日

6/13~6/20 はじまる・り

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5/31、わたしたちは横浜の自宅「であった場所」から、東北をめぐる旅へと出発しました。
そして約2週間の旅を終え、ついに新たな住処となるログハウスへ。

この日記はそこからはじまります。


6/13

実家を出てからひたすら、42号線を南下して、5時間。ついに和歌山との県境付近までやってきた。陽は、すでにとっぷりと暮れて、もう近くまで来ているとわかっていても、とても落ち着いた心地では無かった。
熊野川沿いを、内陸へ。山と山に囲まれた、谷の部分を行く。民家の灯りもまばら。わたしのうろんな記憶では、42号線からほどなくで到着するような気がしたけれど、実際はずいぶん長く走った気がする。(後日、計ってみたら、大体8分30秒くらい。でもこの日は特別長く長く感じた)

相野川を渡ってすぐ、ちゃんとその家はあった。短いような、長いような2週間の旅の終わりは、安心するような少しさみしいような。オレンジ色の窓の明かり。バイクを停めて、玄関を開けたら、おとうさんとおかあさんのにこにこ顔があって、長く大変なお使いが終わった子どものような気持ちになった。

お母さんが用意してくれた美味しい鉄板焼きを食べて、話もそこそこに泥のように眠った。



6/14

ものすごく眠い。でも、気持ちはわくわくでいっぱいになっている。

この日は、町役場(あくまで市役所ではない)や、近隣のスーパー、ここの暮らしには絶対に欠かせないホームセンター、職安などを案内してもらう。
おとうさんが「せんべつやから!」と言って、ホームセンターで殺虫剤や、野良仕事用の長靴や汚れても良い靴、草刈の防護服、などを買ってもらった。この時、わたしは、「まるで冒険のはじまりに装備を揃えてもらう勇者のようだ」と思った。ようこは長靴を手に入れた。防御力が5上がった。てれってれー。

そして、イオンで大量に食料とギフトセットを買う。これもおかあさんが「これはこっちが買うから!」と買ってくださった。ギフトセットは何かと言うと、近所やおとうさんたちのお友だちの方への「ごあいさつの証」である。
ああ~こわい!こわいよ~!と思いつつ、その日は10件くらい回らせてもらった。とても優しい方々ばかりなのだが、卑屈なわたしは人が優しければ優しいほど、その人の怒りを買ったり嫌われたりするのが恐ろしいと思う。大丈夫なんだろうか…やっていけるんだろうか…ととても不安になるが、笑顔で挨拶させていただけて、ほんとうに良かった。
行く先々で、自家製の野菜など頂く。「今はこれしかないの!本当にこれしかないのよ!こんなのしかなくてごめんなさいね!」と言って、玉ねぎをくれたおばあちゃん。「これしかない」という状態でも人に差しだせるって本当にすごいことだ。ビルゲイツにお金をもらうよりずっと嬉しい。

夜、おとうさんとおかあさんと話していて、ほんとうに楽しい。井上はあまりしゃべらない。わたしの方が娘のようかも。



6/15

おとうさんとおかあさんが、炎天下の中、「きつねづか」の草刈りや整備をしてくれる。申し訳ない気持ちになる。わたしたちも説明をしてもらいながら、ひとつひとつ真似してやっていく。植物の名まえを書いた札を、木にぶら下げて回る。たくさんの、いろんな種類の木や花。草のにおい。汗が玉になって噴き出す。

もうぎりぎりの状態の梅で、持ってきた瓶でなんとか梅酒を仕込んだ。今年は、ごくふつうの梅酒。
一応レシピを書いておきます。
梅酒(4L)
梅 1.2kg
氷砂糖 700g
ホワイトリカー 1.8L

まだまだ梅があるけれど、仕込む瓶がないので、すぐに仕込めるよう洗ってなり口をとった状態でざるに置いておく。追熟してしまう前にシロップにしたいのだ。
それでもまだある梅で、梅酵母も仕込んでみる。
色づいている梅を選んで、水と砂糖を入れておくだけ。
さて、どうなるか。

夕方、残りのあいさつ回りへ。手に汗を握った。

夜、おとうさんとおかあさんはわたしたちのためにありとあらゆることをして颯爽と帰っていった。大阪に着くのは深夜だ…。ありがたく、申し訳なく、そして淋しかった。
おかあさんから、3年日記をもらう。ようこは、かしこさが2上がった!てれってれー!
1ページに、3年分の同じ日の日記が並ぶ。「きつねづか」のことや畑のことを書いておくと、便利だから、と選んでくれたみたい。とても嬉しい。さっそく今日から書こう。(実際、このブログはこの日記を元にして書いています)
今月24日に法事があるから、またすぐに会えるのが今から楽しみ。



6/16

梅酵母は、早速発酵している。小さな泡がしゅわしゅわと立ち上り、甘い、梅の香りが漂う。

しかし、外は大雨。ひたすら家の中の整理をする。わたしたちの持ち物を出す前に、この家に残ったわたしたちが活用できないものを、近くのおばあちゃんの家に運ばなくてはならない。
そして強い雨の中、おかあさんがプレゼントしてくれた冷蔵庫が届いた。その冷蔵庫は、2日前に、しばらくは買い物に行けなくても食べられるように、とおかあさんが買ってくれた大量の食材を入れても、まだちゃんとスペースが余った。
ずっとリサイクルショップの2ドアで過ごしてきたわたしは、もう感無量であった。

そして、ずっとほしかったフードプロセッサーもamazonから届く。料理は毎日することだから、どこよりもまずキッチンを整理したので、早速キッチンはわたし仕様になってきており、このカウンターで区切られた世界がわたしの一番自由な空間に思える。美味しい出汁のような、じんわりとした充実感。



6/17

最寄のイオンで、日用品を買う。
そこにある小さなフードコートが、人もいなくて、横のゲーセンとの対比もあいまって、なんだかノスタルジックであった。井上のお腹が減ってしまい、カレーを食べる。これが意外な美味しさなのだ。ナンのつくようなカレーなのだが、ちょっと日本風で、日本風過ぎず、ここにぴったり合っていてすごく美味しい。

料理家電コーナーで、噂のヨーグルティアを現品特価で発見してしまい、少し早い誕生日プレゼントとして買ってもらった。
飛び上がるように嬉しい。これで玄米甘酒も麹調味料もおまけにヨーグルトも作りたい放題なのだ。
うっしっしと言いながら、家に帰った。

梅酵母は、蓋を開けるとぽんっと弾けるよう。



6/18

梅酵母が早くも出来上がっているが、パン種を作る容器がない!とりあえず冷蔵庫にそのまま突っ込む。
キッチンのわたくしシステムがほぼ完成し、料理がどんどん楽しくなっている。

夕方から、「きつねづか」の草刈り。もうすぐやまももが収穫できそうなので態勢を整える。しかし。草と木に阻まれて、なかなか木に近づくのも難しい状態。枝切りばさみを手に、暴力的な気持ちでぎゃんぎゃん切っていく。

大まかな、荷物の運び出しが終わり、家が、我が家という感じになった。活用できなかったものたちと、おとうさんおかあさんにはとても申し訳ない気持ち。でも、わたしたちは物が多いと、動けなくなってしまう。キャパが小さいのだ。ごめんなさい。



6/19

午前中は、大粒の雨。上がった後、草刈りをし、夕方からスーパーへ。これは買い物のためではなく、買った物を家まで「宅配」してくれるかを確認するため。バイクだと、行きは良くても、帰りが大変なことになってしまう。お米や粉類など、冷蔵品以外はできるだけネットで買うけれど、それだけでは暮らせないから。
引っ越し前まではやっていたサービスが終了していて、結局どこのスーパーも自宅まで届けてはくれないみたい。イオンはやってるけど、利用料がかかりすぎるので、パス。市街地までは距離があるし、週に1度の買い出しですべてを済ませたかったから、これにはちょっとがっかりした。

帰り道、夕ぐれの熊野川と山々と、集落に霧がかかり、ものすごく幻想的な光景が広がっていた。カメラを撮りに急いで家に戻り、もう一度とんぼ返り。久しぶりに、フィルムカメラを持ち出す。暗くなっても、F1.9のzuikoなら、撮れるかもと思って。
一瞬ごとに色を変える視界に二人とも夢中になって、歩き、時に駆出して写真を撮った。

そう!梅シロップ用の瓶がやっと届いた。ずいぶん追熟してしまった梅で、シロップを仕込む。発酵してきたら、火を入れれば良いのだ。梅自体がとても甘い良い香りだから、きっとおいしくなるだろう。発酵させる食品は気持ちがとても大事だと思う。相手も生き物だから、きっとおいしくなるよ、と心の中で話しながら仕込んだ。

梅酵母も種を起こそうと思って、瓶の蓋を開けたら、においが変わってしまっていた。腐ってはいないようだけど、もうあの梅のとろけるような香りはしない。一応、粉と混ぜ合わせて、枕元に置いて寝た。



6/20

曇りのち晴れ。陽が射すと、途端に真夏になる。
やはり梅酵母はダメだった。死んでいるのだ。捨てるときは辛い気持ちになった。

昨日の梅シロップ、早速上がってきている。くるくると回して、カビないように。

今日。畑の雑草を抜き、耕しはじめた。ここから色々とはじまっていくのだなぁ。

この日、わたしは丁寧に出汁を引いて、お米を炊き、おかずを作りながら、ここでやっていける、大丈夫。という安心感のようなものが、気持ちの深いところからじんじんと湧いてきた。
その調子でオーバーナイト発酵のパンを仕込んで、良く眠った。



家に到着した6/13から7/13までの記録を、日記帳を元にして書いていきます。
ほんとうは、もっと細かく写真を撮って、更新したかったんですけど、特に家の中のモノを運びだし、自分たちのものが納まるまで、わたしたちは落ち着くことなくずーっと動きつづけていて、そういう気持ちの余裕が全くありませんでした。
ようやくカメラを手にできたのが、6/21。このもう少し後のことです。

これもわたしたちにとって貴重な記録です。何十年後かに、「ああ、そうだったよね」と読み返せる日をとても楽しみにして、こうして毎日文字を重ねていきたいと思います。



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